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  • 執筆者の写真WCF TEAM

THE WAY of Life in France (JP)

更新日:2022年7月13日

WOMENCANFLY.COの連載企画「THE WAY」では、毎月海外で暮らす素敵な女性を紹介しています。


今回ご紹介するのは、フランス在住のパティシエ、宮本景世(みやもと・ひろよ)さんです。日本のパティスリーで7年間働いた後、ワーキングホリデービザをつかって2017年に単身フランスへ。現在はパリのパティスリーで働いています。


フランスへ転職するなんて全く想像していなかったという景世さんですが、インタビューの最後には「フランスに来て本当によかった!」と笑顔で話してくださいました。パティシエとしてのキャリアや日本とフランスの違い、フランス生活についてご紹介します。





小さい頃からの夢を叶えてパティシエへ


小さい頃から誰かを喜ばせるのが好きだった景世さんは、小学生のときからずっと、ケーキ屋さんになるのが夢でした。


「小学生のときに、父と一緒にドーナッツを作るのが楽しかったことを覚えています。私たちが作ったドーナッツを家族が喜んで食べてくれるのが嬉しくて、それがきっかけでケーキ屋さんを目指すようになりました」


東京の製菓学校を卒業すると、お菓子細工に力を入れている地元・茨城のパティスリー(ケーキ屋さん)に就職します。


授業やアルバイトを通して仕事の大変さは分かっていたつもりでしたが 、実際に働いてみると、想像以上に大変だったそう。


「パティシエの仕事は力仕事が多く、朝も早いんです。閉店後にはお菓子細工の練習があり、練習が明け方まで続くこともありました」


先輩に厳しく指導してもらい、最初の頃は毎日のように泣いていたといいます。しかしその努力が身を結び、1年目にしてジャパンケーキショー東京のジュニア部門で銅賞を受賞。その後も次々と入賞を果たします。


「当時は怒られてばかりの毎日でしたが、今思うと怒ってもらえることはとてもありがたいことだと実感しています。あの苦労を一緒に乗り越えた同僚は、今でも大切な存在です」




マジパンケーキの写真
マジパンで作ったお菓子。今にも動き出しそうです!


ワーキングホリデービザで、いざフランスへ!


地元のパティスリーで働き始めて7年が経ったとき、景世さんは次のステージに進むために転職を決意します。ちょうど2店舗目の店長を任されていたときです。


店長になってからはマネジメントの仕事が増えたため、大好きなお菓子作りにもう一度専念したかったのだそう。


「転職しようと思ったとき、高校生のときに抱いていた海外への憧れを思い出しました。内気な性格の私にとっては大きな挑戦でしたが、海外に挑戦するならビザの選択肢が豊富な今しかないという気持ちもあったんです。とても悩みましたが、兄が『やってみたほうがいい』と背中を押してくれたので、一歩踏み出すことができました」


2017年4月。景世さんはワーキングホリデービザでフランスへ旅立ちます。パリのパティスリーで働き、同年夏にフレンチレストランへ転職。レストラン専属のパティシエとして経験を積みました。さらに2020年5月には別のパティスリーへ転職し、現在に至ります。


「英語もフランス語も話せないままパリへやってきたので、フランスに来た当初は苦しい思いをすることがたくさんありました。フランス人スタッフとコミュニケーションがうまくとれないせいで、日本では当たり前にできていたことさえできず、歯がゆかったです」


渡仏した最初の頃は思い悩んだものの、景世さんは生来の負けず嫌いを発揮し、すぐにフランス語の猛勉強を開始します。その甲斐あって、今ではスタッフや友人とフランス語でコミュニケーションをとれるようになったそうです。



兄とツーショットの写真
いつも応援してくれるお兄さんと


景世さんは、転職先のレストランで就労ビザを取得しました。就労ビザの取得は書類や手続きが多いため時間がかかります。フランスで働くには、まずワーキングホリデービザか学生ビザで入国し、その後就労ビザに切り替えるという流れが一般的です。


日本とフランス、働き方はどう違う?


日本とフランスの違いは、就職活動の段階から顕著にあらわれます。


「日本では謙遜は美徳とされていますが、フランスではその謙遜を汲み取ってはくれません。特にパティシエは実績を重視されるため、しっかりアピールすることが大切です。私は履歴書に『モチベーションシート』を添付してやる気もアピールしました」


スタッフ同士のコミュニケーションのとり方も異なるのだとか。


「フランスでは立場や役職に関係なく、皆がフラットに意見を言い合います。私もしっかりと意見を言うよう心がけていて、フランスに来てから強くなりました」


その他、日本では高価なバターを、乳製品が安いフランスでは躊躇せずにたっぷり使えること。日本では早朝に始業するのに対し、フランスでは深夜に始業するパティスリーが多いこと。日本はイチゴの角度を揃えるほど丁寧に仕上げるのに対し、フランスは効率的に仕事を進めること。小切手文化が残るフランスでは、給与の支払いが小切手のパティスリーもあることなど、たくさんの違いがあります。


なかでも、もっとも大きな違いは、フランスには世界中から一流のパティシエが集まること。そのため、日本では経験できないようなチャンスをつかむこともできるのだそう。


「2018年に、チョコレートの世界大会である『ワールドチョコレートマスターズ』がパリで開催されたとき、垣本晃宏シェフ率いる日本代表チームの現地作業メンバーとして、作品作りを手伝うことができました。尊敬する一流のシェフたちと一緒に作業をさせてもらえて、本当に嬉しかったです。この経験はフランスにいたからこそできた経験だと思います」



垣本晃宏シェフと駒居崇宏シェフの写真
尊敬する垣本晃宏シェフ(右)と駒居崇宏シェフ(左)

産後4ヶ月で仕事復帰するフランスの女性たち


フランスは、少子化対策先進国といわれています。


公立であれば、幼稚園から高校までの学費は無料です。経済的サポートも手厚く、第2子が生まれると家族手当が支給されます。第3子が生まれると、さらに手当が増額されるため、景世さんのまわりには子どもが3人いる家庭が多いのだそう。


経済的な面では、子育てのハードルは高くないようです。


また、多くの女性が出産後も仕事を続けており、出産や育児がキャリアアップを阻むケースは少ないようです。


「私の周りにも働く女性はたくさんいます。フランスでは3年間育休を取得することができますが、友人は出産後4ヶ月で仕事に復帰していました」


ベビーシッターサービスが充実しているため、子どもが0歳のうちからベビーシッターを雇い、出産後3〜4ヶ月で仕事復帰するのが一般的なのだそう。キャリアを諦めないフランスの女性は、こうして仕事と子育てを両立させているようです。


「パティシエのなかにも、子育てをしながら働いている方がたくさんいます。早朝の仕込を担当するパートタイムも重宝されるため、子育てと両立しながら長く続けられる仕事だと思います」


ちなみに、フランスは育児休業制度や家族手当だけでなく、医療保険も充実しているのだそう。加入が義務付けられている公的医療保険と、任意で加入できる『Mutuelle』という医療保険の両方に加入していれば、医療費の負担額はほぼゼロです。病気や怪我をしても、医療費の心配は必要ありません。


ケーキの写真
お客さんの反応を楽しみに作っています

楽しいフランス生活、しかし部屋探しは大変!?


景世さんがフランス生活で苦労したことの1つが、家探しです。


不動産業者を仲介すると手数料が高くつくため、ウェブサイトで物件を探し、直接オーナーと連絡をとり合っていました。しかし、突然連絡が途絶えることもしばしば。良い物件に入居するためには、根気強さと運が必要なのです。


「私はフランスで3回の引越しを経験しましたが、毎回とても大変でした」



1件目:フランス人マダムとの2人部屋
2件目:1部屋に2段ベッドが5台並んだ10人部屋
3件目:レストランの上階にある部屋を間借り
4件目:友人の部屋を引き継いで、ようやく理想の部屋に

パリの家賃は高く、2件目の10人部屋でも、家賃は月550ユーロ(2020年6月1日時点で約65,590円)。部屋によっては「シャワーを使えるのは朝7時から夜11時まで」、「冷蔵庫の食材には名前を書くこと」などのルールもあります。





家探しは大変でしたが、パリの暮らしはとても気に入っているようです。


フランスの労働法では、基本的に年間5週間以上の有給休暇を取得しなければならないため、週休2日で働く景世さんにとって「今が人生で1番休んでいる時期」なのだそう。


パリには自然豊かな公園があるので、休日には友人や同僚とピクニックへ出かけたりサイクリングへ出かけたりして楽しんでいます。


ワインとバゲットとチーズがあれば、最高の休日です。



フランス
休日には友人たちと楽しく過ごしています

パティシエとして、さらなるステップアップを目指して


パティシエのキャリアは、転職しながらさまざまなパティスリーで実績を積むことでステップアップしていきます。そのため、日本では7年もの間、1つの店舗で働いてきた景世さんですが、フランスでは果敢に転職にチャレンジしています。


「今はもっとレベルアップしたいという思いが、日に日に強くなっています。実績を積んでパリ以外の街でも働いてみたいし、スタッフが全員フランス人のパティスリーでも働いてみたいです」


ゆくゆくは、自分を表現できる場をもちたいのだそう。それが実店舗なのか、ネット通販なのか、はたまた全く別の形になるのかは模索中です。


「友人と集まっては、一緒にご飯を食べながら『こんなこと、やってみたいね』と話しています。パティシエではない友人との出会いもあり、フランスに来て視野を広げることができました。フランスで働くなんて想定外でしたが、本当に来てよかったです!」


景世さんは、自分がつくったスイーツが誰かを笑顔にしたときにもっとも喜びを感じるのだそう。


「今でも覚えているのは、去年亡くなった祖父のことです。普段はあまり笑わないのですが、米寿のお祝いに祖父が好きなお相撲さんのケーキを作ったら、泣いて喜んでくれました。スイーツは人を幸せな気持ちにすることができると思います。これからも、子どもから大人まで、みんなが笑顔になるお菓子を作っていきたいです」


日本からフランスへと働く場所を変え、自身でも想像していなかったキャリアを歩んでいる景世さん。しかし、根底にある「人を喜ばせたい」という想いは、小さい頃にお父さんとドーナッツを作ったときから全く変わっていないのです。



お相撲さんケーキ
米寿のお祝いに作ったお相撲さんケーキ。泣いて喜んでくれました。

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Women can fly.


Much love, xxx

Team WCF


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